研究テーマ


担当:宮崎智也 (2005.04.01(B4)〜2006.03.31(B4))

研究背景及び目的

 ヒ素(As)は自然環境中において微量ながらも広く分布する元素であるが、インドやバングラデシュなどにおいては、高濃度のヒ素を含む地層が存在する。この地域では、地下水汲み上げによる灌漑政策を進めた結果、高い生態毒性を有するヒ素が地下水へと溶出し、それを利用する地域住民のヒ素中毒が社会的な問題となっている。一方、先進国などにおいても、ヒ素が半導体の原料や防腐剤などとして用いられていることから、その工場や跡地で環境基準を超えるヒ素がしばしば検出され、さらにヒ素汚染土壌からヒ素が地下水等へ溶出することによる水環境のヒ素汚染が新たな社会問題となっている。よって、それらヒ素汚染水からヒ素を除去する手法は必要不可欠であると言える。

 ヒ素は、自然環境中においてはそのほとんどが5価のヒ酸(As(X))、あるいは3価の亜ヒ酸(As(V))の形で存在しており、As(V)は毒性が高く且つ吸着剤等への吸着性が低いことが知られている。先に述べたインドやバングラデシュにおけるヒ素汚染水中においては、ヒ素のほとんどがAs(V)の形で存在することが明らかとなっており、ヒ素汚染水から効率的にヒ素を除去する方法として、As(V)をより吸着性の高いAs(X)に酸化し、吸着剤を用いてヒ素の除去を行う方法が考えられている。

 このAs(V)の酸化においては、現在、次亜塩素ソーダ等の酸化剤を用いて酸化を行う処理手法が行われている。ここで、自然環境中においては、As(V)As(X)へと酸化する能力を有する微生物、すなわち亜ヒ酸酸化細菌が存在する可能性が示されており、生物学的処理法の利点として低コスト処理となる可能性がある点が挙げられる。したがって、この亜ヒ酸酸化細菌によるAs(V)の酸化活性を用いたヒ素汚染水の処理法を提案することにより、低コストで安全な水資源を供給することが可能となるものと考えられる。

 また、資源としてのヒ素は、将来枯渇されることが懸念されていることから、その回収技術を確立することによって再資源化されることが望まれる物質である。

 そこで本研究では、自然環境中の亜ヒ酸酸化細菌によるヒ素の酸化活性を利用したヒ素汚染水の処理および除去されたヒ素の回収プロセスの構築を最終目的とし、種々の検討を行う。



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